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バリ島:パタンバイのお祭り

夕方4時頃、ヌサ・ペニダでのダイビングから宿へ帰ってきました。夕飯にはまだ早いし、ケチャダンスでも見に行こうか、と話していたら、イロさんが「今日は地元パタンバイのお祭りだから行ってきたら」とのこと。滅多にあるチャンスではないのでさっそく便乗させて頂くことになりました。

するとイロさんが、家族用の大切なお祭りの衣装を僕ら夫婦に惜しげもなく貸してくれました。にわかバリニーズの出来上がりです。
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この衣装を着て、いざお祭りへ。場所は朝マーケットをやっていた道なのですぐ分かりました。この道はたぶん参道のような役目も果たしているのですね。朝市は、門前市でもあったわけです。
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バリはインドネシアの一部ですが、その国民の99%がイスラム教と言われる中で、バリの人たちはバリ・ヒンドゥーという特殊な宗教を今も大切に守っています。

宗教は生活の中に深く浸透し、その一部となっているようです。ちょっと手元のガイドブックから引用しますね。

「善を象徴する聖獣バロンと悪の象徴である魔女ランダの果てしない戦いを描く。バリ・ヒンドゥー教は『善悪』『白黒』『陰陽』など、相反するものの共存によって世界のバランスが保たれているという概念を持つ。この教えを元に、プラ・ダラム(死者の寺)に奉納される舞いが『チャロナラン』。(後略)」

僕らはどうもこの「チャロナラン」を見る機会に恵まれたようなのです。
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道の向こう側には衣装を着た部落の男性達がずらりと並び、道のこちら側には女性や子ども達が並んでいました。僕らもこちら側です。初めはこの並び分けを意識してなかったのですが、徐々に重要な意味があることが分かってきました。
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しばらく、道のまん中では聖獣バロンと魔女ランダの戦いとおぼしき仮面劇が繰り広げられていました。周囲の人たちはあまりこの寸劇に見入っている様子はなく、辺りをそわそわと見渡したりして落ち着きがありません。なんだ集中力がないな、しょっちゅうやってて飽きているのかな、なんて、このときの僕は勝手に思っていました。
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生演奏のガムランが、時に激しく、時に瞑想を誘うように静かに、鳴り響きます。確かにこの音楽にはちょっと催眠作用のようなものが・・・と、僕が思いかけた時でした。向かいの男性達の中にいた年長の少年のひとりが目をつぶり、スティービー・ワンダーのように首を振って一種のトランス状態に入った様子です。
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周りにいる正気の少年達はトランスに入った一人を囲むように座り直し、彼のことをいつでも押さえられるような態勢をとりました。

寸劇は段々と激しさを増し、ガムランの音も最高潮に響き渡ります。

すると突然、道の斜め向かいで大声を上げながら飛び出そうとした男性がいました。周りの人たちが必死に押さえています。この頃になってようやく僕らにも事情が飲み込めてきました。この祭りは見ている人たちの中から次々とトランスに陥る人たちが出るのです。

やがてあちこちで、突然奇声をあげては飛び出ようとする人たちが増えてきました。中にはあまりの素早さに周りが押さえきれず、寸劇の中に飛び込んでしまう人も。周りの女性達からはその度にどよめきがわき起こります。なるほど、周りをきょろきょろと見渡していたのは、誰がトランス状態に陥るのかを見極める為であり、道の向こう側とこちら側で男性と女性・子どもが分けられているのは、トランスに入るのが男性だけであること。またトランスに陥った人たちは神懸かり的な馬鹿力を発揮するので危険なこと、がその理由らしいのです。

日が落ちるとともに、祭りはいよいよ盛り上がり、異様な雰囲気になってきました。やがて寸劇は終わりましたが、トランスに陥った人たちはまだまだ続出しています。寸劇の舞台だった道路上は、今や奇声を上げて走り回る人たちと、それを押さえようとする人たちでごった返しています。

なんという混沌。じっとりとなま暖かく湿ったバリの空気には、確かに神様が存在する、と異邦人である僕にも感じられた瞬間でした。しかし、混沌の一方で不思議な秩序も保たれていて、走り回ったり叫んだりしていた人たちが気を失うと、未だ演奏を続けているガムラン隊の前にひとりずつきちんと横にされ、タオルなどで煽って風を送る人たちも出てきました。

僕らは地元バリニーズのただ中にいて、まるで舞台と客席が一体となって作り上げていく小さな劇場の熱い観劇に参加してしまったようでした。このライブ感、そしてグルーブ感はその場にいた人で無いと分からないでしょうね〜。凄い体験をさせて頂きました。

僕は祭りからの帰り道、興奮覚めやらぬ火照った頭でバリと日本の類似性について考えていました。
一見、バリと日本はあまりにもかけ離れた文化のような気がします。しかしそれは実は見た目だけで、色々と共通点もあるのではないかと感じました。たとえばたくさんの神様がいることや、その神様が永遠に決着の付かない果てしない戦いを続けながら、善と悪のバランスの上に世界を成り立たせていることなど、日本にも八百万の神のいることや、和を貴しとして決してはっきりと決着をつけない日本の文化に思いを馳せたのでした。

そして何より、どちらも豊かな風土に恵まれ、自然の恵みを享受し、自然に感謝しながら生きてきた民族であること。自然に対する感謝の気持ちは多神教を生み出す、という点などに日本とのつながりを見いだしたのでした。まあ、かなり強引なことは認めますけどね。f ^ ^ *) つまりはそれほどに、バリに惹きつけられた、ってことでしょうか。
by idive | 2009-12-15 19:43
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