「食べる」ということ
いきなりとてつもなくでっかいテーマです。正直言って僕の手には余ります。が、最近その事について考えさせられるようなニュースや本に立て続けに接する機会があったので、ブログのネタにしてみようかな、と。
まず、「ザ・コーヴ」という映画が今年度アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞しました。この映画は和歌山県の太地町におけるイルカ漁を盗撮して作られました。この映画に関する詳しい情報は映画名テキストリンク先のWikipediaを参照して下さい。 それから、日本の調査捕鯨を執拗に妨害していたシーシェパードの船長が、日本国内での裁判にかけられる為に連れてこられた、というニュース。この船長にとっては自分の活動がより目立ったほうが寄付をより多く集められる、という事情があるので、これはある意味彼の筋書き通りの展開なのです。裁判になれば公の場で自分の意見を主張することも出来ますし。 それから今日現在もドーハで行われている「ワシントン条約会議」では、クロマグロやサメ、宝石サンゴなど日本人にも関係の深い動植物の漁業規制などが話し合われました。 「ザ・コーヴ」は、そもそもそんな映画が存在したこと自体に驚きました。しかもそれがアカデミー賞を受賞してしまうなんて。僕は結構アカデミー賞好きで、作品賞や監督賞を取った映画はそれだけで見たい、と思ってしまうのですが、今回は・・・。 僕はこの映画を見ていないので何も言う資格はないのですが・・・。盗撮、ということは漁をしている人たちの同意は少なくとも得ずに撮影をした、ということですね。このこと自体、公正な立場から事実を伝えるドキュメンタリーという手法に相反する、と感じます。 それにイルカはかわいいし頭がいいから動物ではなく人間の友達だ。食べるなんてもってのほかだ。という主張にも違和感を感じます。じゃ、牛や豚は?イルカは野生だから獲っちゃダメで、牛や豚は管理された家畜だからいいんだ、という議論もありますが、納得は出来ません。 そんな時、出会ったのがこの本。 ぼくは猟師になった 33歳という若さでワナ猟師8年のキャリア。自分で獲って、さばいて、食べることを実践している筆者の書いた本です。 僕がとても共感した部分を一部抜粋します。 「1988年、捕鯨が禁止されます。日本の伝統文化である捕鯨が欧米などの圧力で禁止され、鯨肉が食べられなくなるというのは許せませんでした。当時、新聞などで紹介されていたアメリカの動物愛護団体の主張は『鯨やイルカは高い知能を持った高等動物で、それを食べるなんていう野蛮な行為は非難されてしかるべきです』といったようなものでした。(中略)これも欧米諸国による他の地域や国の文化に対する偏見をもとにした、価値観の押しつけに他なりません。動物を高等、下等と区別し、自分たちが大量に消費する家畜は高等でないと言い張るご都合主義。『豚は下等な動物だから食べてもよい』ということです。 動物を自分たちに都合のよい形質に無理矢理改良して、それを狭い畜舎で飼育し、大量に殺していくことの方がどれほど野蛮なことなのか。(中略)ただ、動物愛護運動というのも、結局は動物を差別し都合よく利用しようとする人間の自分勝手な主張だと考えるようになっていきました」 これはワナ猟を始める前の筆者がどのような経緯で、やがてワナ猟を始めるきっかけに繋がっていくのか、を述べた部分です。ですが、鋭い批評ですよね。言いたいことを代わりに言ってくれてありがとう、って思いました。 また、こんな本も読みました。 マタギ 矛盾なき労働と食文化 マタギというと熊の毛皮をかぶって雪山で熊を相手に死闘を繰り広げている、みたいなイメージがありますが、この本を読むとマタギの人たちが山からの自然の恵み(それは熊だけでなく川魚や山菜も含まれる)を大切にいただき、何一つ無駄にすることなく、謙虚に生きている人たちだということが分かります。 ワナ猟の筆者千松氏やマタギの人たちに共通しているのは、自分の食べるものは責任を持って自分が獲る、という人間にとって欠かせない日常の営みを真摯に実践している、ということです。 翻って自分を省みると、いや、大多数の先進国に住む人々はキレイにパックされた肉や魚の切り身を買ってきて調理するのが当たり前であり、それが他の生き物の命だということをともすれば忘れがちです。 何も今さら皆が狩猟採集の生活に戻れるはずもなく、そのこと自体が悪いというのではありませんが、僕は食べる、という生きていく上で不可欠な作業が、他の生き物の命をいただくという行為に他ならないことを忘れてはいけない、と感じるのです。 ワシントン条約会議では、中国が日本と同じく規制に反対する立場に回ってくれたお陰で、大西洋・地中海産クロマグロの国際商業取引を原則禁止するモナコ提案は反対多数で否決されました。日本が反対していたクロマグロの禁輸措置はひとまず回避された格好です。 しかし、地球の反対側でとった魚をはるばる運んできてまで食べる必要があるのかどうか、という点に関しては、僕は懐疑的です。むしろモナコ提案を是とします。ただ、これをワシントン条約会議=正式名称「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」の中で議論することには違和感を覚えますが。 映画「ザ・コーヴ」やシーシェパードの主張は、政治やビジネスの思惑もからみ、一方的な価値観の押しつけを強要するもので到底容認出来ませんが、一方で、クロマグロに限らず遠い場所からわざわざ運んでくる食材もいいとは思いません。 最近ではそうした反省も踏まえて、また地球の環境保護といった観点からも、地産地消といったことも言われ始めていますが、僕自身、真冬に夏野菜のキュウリやなすを買い、海外から安く入ってくる食材を普通にスーパーで買ってしまいます。 日本人は古来、獲った命を余す所無く利用し、自然の恵みに感謝して生きてきた民族でした。今、忘れ去られつつあるそうした日本独自の価値観が、まさに現代の地球に求められている、そんなふうに無理矢理この稿をまとめて、風呂に入って寝ようと思います。f ^ ^ *) ・・・自分で広げた大風呂敷、やっぱり、こんな短い文章の中ではまとめられなかった。( ̄Д ̄;) 参照したサイト 「映画のことならエイガ・ドット・コム」
by idive
| 2010-03-24 22:33
| 日本のこと
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