金環日食・観測記【2012年5月21日】

我々観測隊は、朝5時05分にベース基地を出発。観測地へと向かった。起床は4時45分。天気は予報通りの曇り。金環日食の観測には不適な条件だが、自然には逆らえない。一縷の希望を託して道を急いだ。

観測機器の準備は万全だ。しかし、実はこの機器に関しては準備が間に合わない可能性があった。
1ヶ月ほど前から近所のホームセンター・コメリのレジ横に、大量の日食観測用メガネが売っているのは知っていた。しかしコメリには週に2、3度も通っていながら、そのメガネを購入することはしなかった。

いよいよ金環日食が近づくにつれ、テレビなどでの報道も過熱。我々もようやく重い腰を上げ、観測機器の準備に着手した。

が、金環日食の3日前にコメリに行くと、既にメガネは売り切れていた。店員に聞くと、もう入る予定は無いという。この、日本では25年ぶり、そして次の金環日食までは18年もあるという世紀のイベントをこの目で見ようという目論見は、いきなり頓挫するかに思えた。

だが、現代は情報化社会、ネット社会である。我々はすかさずネットで金環日食用メガネを検索した。その結果、アマゾンで手に入れたのがこれである。
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ご覧の通り、「3D宇宙大図鑑」という書籍の付録である。しかもメガネというよりは下敷きに穴が開いたものに近い。が、無いよりはマシだろう。とにかく、金環日食当日までに、観測機器の準備は出来た。アマゾン万歳。

次に重要なのは観測地点である。我々の住む松崎町は西伊豆にある。朝日を見るのに、どうも西伊豆からというのはピンと来ない。すると、偶然にも東伊豆の下田市にある寝姿山ロープウェイが、金環日食当日は特別に朝5時30分から営業するという情報を得た。

これはまったく関係のない下田の黒船祭りに関してググっている時に発見したのだが、有益な情報であることに変わりはない。ネット社会万歳。

この寝姿山は伊豆にあり、しかも見晴らしのいい山頂というロケーション。それにロープウェイという非日常的なイベント性も申し分ない。観測地点も決定した。

そして当日。我々は一路下田を目指した。我々のベース基地がある松崎町からは車で30分ほどの距離である。

観測地点に向かう途中、我々は次なる困難に直面した。猛烈な空腹である。車のハンドルを握っていても飢餓感から注意力が散漫になり、生命の危険を感じた。

しかし、餓死する寸前、前方にコンビニを発見。食料を手に入れて事なきを得た。
コンビニ万歳。

我々は予定通り5時半頃寝姿山ロープウェイ駐車場に到着した。先着200名には観測用メガネが無料で配られるとあって、もしもう駐車場がいっぱいで停める所がなかったらどうしよう、と思っていたのだが、杞憂だった。
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駐車場はがら空きで、ロープウェイの職員らしき人が3人ほど、手持ちぶさたで立っていた。その誘導に従って車を駐車。すると、相次いで2台ほど車が入ってきた。我々はほぼ一番乗りだったらしい。

ロープウェイ乗り場の入口を入った所は、お決まりのお土産コーナーである。朝5時台だというのに、きちんと制服を着た職員の方が数人いた。この金環日食をビジネスチャンスに変えよう、という並々ならぬ熱意を感じた。
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ちなみにこちらが無料で配られた日食観測用メガネとロープウェイの往復チケットである。チケットはひとり1,000円だった。観測には常に多大な費用が必要となるが、科学の進歩、また滅多にない観測のチャンスを活かす為には仕方がない。我々はふたり分のチケットを、2,000円で購入した。

この日食観測用メガネが無料で配られるという情報は、アマゾンで観測機器を手配した後に知った。なんだ、無料で手に入るんなら買う必要なかったじゃん。しかし後の祭りである。
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いよいよロープウェイへの乗車開始。平日の朝早くだというのに山頂へ向かうもの好きな人々が他にもけっこういることに驚く。
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ゴンドラ内部から下田市街を見下ろす。
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実は、このロープウェイに乗るのはたぶん20年ぶりくらいだ。以前下田に住んでいた時は歩いて3分ほどのところに10年間も住んでいたというのに一度も来なかった。地元の名所なんてそんなもんである。まあ、今回はその滅多に来れない名所に来ることが出来た、という点でも収穫であった。

山頂に到着。眼下に下田の湾を見下ろすことが出来る。ペリー提督が黒船を率いてやって来た頃には、この山頂から黒船を見張っていたそうである。当時は当然山の上まで歩いて登ったのだろう。ご苦労なことである。
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ロープウェイ乗り場を出ると、山頂は公園のように整備されて意外に広いことが分かった。我々は物珍しさも手伝って、いや、最適な観測地点を決める為に辺りを散策することにした。

散歩を初めてすぐに、大発見があった。それがこちら。
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ヒレがひらひらの鯉である。人工的に作られたものであろうか。値段はいくら位するのだろう。本来の日食とは関係のない所で、つい道草を食ってしまった。

これは愛染堂、よく分からないが縁結びのご利益があるらしい。辺りにはハート型の絵馬がびっしりとぶら下がっていた。結婚9年目の我々夫婦には(金環日食にも)あまり関係がないようにも思えたが、とりあえず手を合わせておいた。
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余談だが、この散歩中、読売新聞の記者だという人に話を聞かれた。県内版の片隅に、我々のことが小さく記事になって載るかもしれない。写真は撮られなかった。

さらに先に進むと、無料の休憩所があった。実は山頂はけっこう肌寒かったので、風をしのげる場所はありがたい。ついに観測地点も決定した。
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中に入ると、既に何組かの人々が思い思いに窓のそばのテーブルを占めていた。我々と同じ、始発のロープウェイに乗ってきた人々だ。鯉だの愛染堂にかまけていた我々と違い、いち早くこの無料休憩所をみつけて場所を陣取ったらしい。抜け目ない人達だ。

それにしては眠そうで、あまり観測に対する熱意は感じられなかった。というか、完全に寝てるし。途中ではイビキも聞こえた。
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無料休憩所から見る空は、一様に雲に覆われていた。
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だが時々雲の切れ間から太陽が顔をのぞかせることもある。我々も窓際の席に陣取って、観測を開始した。

・・・が、一向に雲が切れる気配はない。後から入ってきたおじさんは、大袈裟にため息をついたり、携帯で知ったのか「東京は晴れてよく見えているらしい」「この雲じゃ見えないな、ダメだ」とか、ネガティブなことばかりを言っている。じゃ、来なきゃいいのに。

その時、一瞬日が差した。我々はすかさず観測用メガネを目に当てた。いや、正確には私は書籍の付録だった下敷きを、相棒はロープウェイ乗り場で配られた無料のメガネをだ。

その結果、驚くべき事が分かった。書籍の付録の下敷きでははっきりと太陽の欠けている様子が分かるのに、無料のメガネではぼんやりと見える程度で、明らかにその見え方に差がある、ということだ。

これは実際に観測してみないと分からない観測機器の性能の差であった。
このことから、やはり無料のものにはそれなりの落とし穴がある、という教訓を得ることが出来た。

その後我々は、1時間半ほどこの場所にいて、太陽が出る瞬間は太陽を、それ以外の時は周りにいる他の観測者を観察しながら時間を過ごした。

先ほどイビキをかいていた観測者は我々が「見えた見えた」と騒いだせいか、起き上がって観測をしていた。それ以外の人達も同様だったと思うが、太陽が顔を出している間はまっ黒なメガネに顔を押しつけているので、周りを見ている余裕はない。

太陽は明らかに下敷きメガネの方がよく見えるので、我々はこれを仲良く交互に使用した。この辺りが夫婦円満の秘訣である。

残念ながら金環日食の5分間は厚い雲に遮られて、太陽のリングを見ることは出来なかったが、欠けている太陽を見ることは出来たので、充分にその気分を味わうことは出来た。

満足した我々は快適だった無料休憩所の観測地を後にすることにした。
外に出ると、意外なことに大勢の人が未だ太陽の出現に一喜一憂していた。
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我々も足を止めて、もう一度下敷きメガネを使って太陽を見上げた。
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こうしてたっぷりと日食を観測した我々は大満足で帰りのロープウェイに乗り込んだ。天気予報は悪かったので、観測自体を取りやめようかとも思ったのだが、決行してよかった。

金環日食、万歳!(*^^*)
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by idive | 2012-05-21 12:11 | 日々の生活
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