「天使と悪魔」
昨日、ダン・ブラウンの「天使と悪魔」を読み終わりました。
ダン・ブラウンはあの「ダ・ヴィンチ・コード」を書いた作家で、本作はこれより先に書かれたものです。そして「ダ・ヴィンチ・コード」の主人公ロバート・ラングドンのデビュー第一作でもあります。(「ダ・ヴィンチ・コード」は第二作) 読んだ感想。「ダ・ヴィンチ・コード」とよく似た雰囲気の話ではあります。ただ、「ダ・ヴィンチ・コード」の謎解きが、最後ワンパターンだったのに比べると、こちらの方が面白かった気がしました。ま、詳しく書くとネタバレになるので、この辺にしておきますが・・・。 さて、この本の重要な主題は「宗教と科学の対立」です。本書の中の登場人物の一人が、とても印象深い台詞を言います。 要約すると、科学は宗教に勝利し、新たなる崇拝の対象となる栄誉を勝ち取ったが、その科学はいったい人間に何をしてくれたのか。たくさんの利便性や娯楽をもたらしてくれはしたが、これらは心を満たしてくれただろうか。新しいテクノロジーによって、電子的に世界とつながっているはずの人々が、より孤独を感じ孤立感を強めているのはなぜなのか・・・?といった問いかけがなされます。 これはあくまでもキリスト教的社会を背景にしたお話で、ここでの宗教とは、もちろんキリスト教(しかもカトリック教)をさします。 科学が発達したせいで、地球はありふれた辺境の恒星太陽の周りを回っているとってもちっぽけで特別でもなんでもない惑星だということがはっきりし、2000年前に水の上を歩いたという男の奇跡は、すっかり色あせています。 これが理由で(かどうかはわかりませんが)信仰は急速に失われており、信ずべきものが無くなったせいである種のアイデンティティクライシスに陥っている、とこの本は言っている様です。(あくまでも僕の深読み、というかかなり強引な話の持って行き方です・・・) 翻って、ここで我々日本人の事を考えてみましょう。 我々日本人は、元々キリスト教のような強力な宗教を持っていませんでした。 代わりにもっとゆるやかな、宗教というよりは民族の共通の価値観のようなものを、自然に持ち合わせていました。 それが何かをここで詳しく検証して行く時間も、実力もありませんが、日本人の美徳と言われたものとは、案外そんなものの中にあったような気がします。 しかし、戦後の日本は、その価値観が崩壊してしまった、と言えるのかもしれません。 信ずべきものが無くなったお陰で、社会にこうあるべきだ、という規範がなくなり、何でもありのやりたい放題の社会になりつつあり、自分さえ良ければ、の自分勝手な考えが横行し、今や日本人の信ずるものはお金、金、金、金、これだけのようにも見えます。(ほりえもんや日銀総裁の事を持ち出すまでもなく) ニュースで毎日のように取り上げられる飲酒運転による事故、教師による買春、実の父母による児童虐待など、まさに自らを律すべき規範のない中で、判断を下すべき価値基準を失い、自分の欲望のままさまよい歩く日本人の姿が垣間見えるような気がしてなりません。 ありゃりゃ、面白い本を紹介するはずが、なんだか随分と大きな話になってしまいました・・・。 しかし、たとえば中東のイスラエルやイラクの問題にしても、今の日本の事にしても、宗教だとか人間の精神性抜きにしては語れない部分があると思うので、ついつい話が脱線してしまいました。 ・・・まあ、暇なガイドの独り言、と聞き流して下さいまし。
by idive
| 2006-09-25 23:14
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