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イランとイラク

昨日、イラクの大統領がイランの大統領に会いに行った、とニュースでやっていました。
これを聞いて、ヘーと思った方も多いと思います。その方は、一昔前にイランイラク戦争というのがあった事を思い出されたのでしょうね。
昨日の敵は今日の友、ってわけでもないんでしょうが、変われば変わるものです。

日本人の我々からすると、同じ中東の国で国境を接し、同じイスラム教の国で国の名前も一文字しか違わないんだから、仲良くして当然、みたいな感覚があるんじゃないかと思います。

ところが、この両国には大きな相違が、実はあるそうです。
まず、イラクはアラブ人で、イスラム教スンニ派が主体。これに対してイランはペルシャ人系でシーア派です。
つまり以前のイランイラク戦争は、スンニ対シーア、アラブ人対ペルシャ人という宗教派閥的、人種的背景があったのだと思います。

余談ですが、イランイラク戦争のきっかけは、長らく親米派だったイランのパーレビ国王がシーア派のイスラム革命によって倒され、最高指導者ホメイニ師によるイスラム共和制が敷かれたことによります。
その頃イラクではサダム・フセインが実権を掌握していて軍備を増強し、イランの革命の混乱につけ込んで軍事侵攻しました。
このとき、アメリカなど西欧諸国はイランのイスラム革命に介入しようと、イラクを積極的に支援しました。つまりアメリカは、その時の都合であっちについたりこっちについたり、節操のない事を平気でやる国なんです。

話を元に戻します。
以前、血みどろの8年にもわたる戦争をした事のある両国が、何故ここに来てこんなに仲がいいのか。それは、現在イラク政府で主流派なのはシーア派だからです。それでイランに行って、自分の国が内戦状態だからちょっと協力してよ!と、言いに行った訳です。

イランのアフマディネジャド大統領はアメリカ大嫌い。産油国なのに「核施設を作る!核施設を平和利用の為に作るのはイランに当然ある権利で誰にも邪魔はさせない」と言って、ブッシュ大統領など西側諸国から「おい、おまえちょっと待てよ」と言われています。

なのでアフマディネジャド大統領は、イラク駐留が長引き、イラク国内の混乱になす術も無いアメリカに対して影響力を見せつけたい思惑もあって、イラクの大統領をイラン国内に呼んで会談をしたらしいです。

現在、イラク国内ではスンニ派とシーア派の宗派対立が激化しており、アメリカが協力して作った治安維持部隊が治安を維持するどころか、対立する宗派の住民を誘拐したり拷問したり、といった事をしている、とも聞きます。

いやいや、しかし日本人からすると理解しにくい状況ですよね。
独裁者が、たとえアメリカの押し付けがましい正義の故だったとしても一応いなくなり、さあこれから自分たちの国を再建しよう、というそのタイミングで、国内で同じ民族が殺し合う。
日本人なら、そこはなんとか話し合いで・・・、と言う所ですが、そうはいかないのが宗教における対立の難しさです。

これはキリスト教において言われた言葉だそうですが、「異教よりも異端の方が悪い」ということがあります。
異教とは、キリスト教に対する仏教とか、他の宗教をさします。
異端とは、同じ宗教なのに解釈を変えたもの、をいいます。
キリスト教ならカトリックとプロテスタント、そしてイスラム教ならスンニ派とシーア派が互いに異端である、ということですね。
異教徒は、神の正しい教えを知らないのだから仕方ない、しかし異端は神の正しい教えを間違って解釈している。許せない、となるわけです。

ちなみに、キリスト教はユダヤ教から発生し、イスラム教はそのキリスト教をさらに改良したという形で発生しました。ということは、この宗教はどれも唯一絶対の造物主を信仰するという点において共通しています。こうした宗教の事をまとめて一神教と呼びます。
そしてこれらの宗教の神様は、実はヤハウェとかエホバとかアラーとか呼び方は違いますがどれも同じ神様の事を指しているのです。
そしてこの一神教に共通の事として、自分たちの神様は絶対正しい。そしてそれを信じている自分たちも同様に絶対正しい、だから異端は許せない、となります。

こうした事がわかってくると、世界は実は宗教がひとつの大きな動機となって動いてるんだなー、ということが見えてくる気がします。
そして我々日本人は、明治以来、宗教的なものは皆迷信だから、迷信は無視していい、科学をやればいい、という考え方が主流となり、宗教には無頓着な人が多いと思います。

しかし、世界は宗教に抜き差しならない影響を受けている。
他の国の人が何を信じ、どう行動するか、ということは国や会社のレベルでも、個人のレベルでもすごく大切な事だと思います。国際社会と言われ、海外旅行が一般化した現在、そうした自分とは違う思考回路を持つ人と上手に付き合って行く上で、宗教は避けて通れない必修科目のような気がします。

しかーし!
何故か日本の教育って、そうした事がすっぽり抜け落ちてしまっていると思いません??
いかがでしょうか?

ちなみに今回参照した本は「世界の『宗教と戦争』講座」 井沢元彦著 徳間書店です。
このほか、ウィキペディア、産經新聞などを参考にいたしました。
by idive | 2006-11-29 22:02 | その他
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